あなたって紳士ね。
たまに「あなたって紳士ね」と言われることがある。
例えば、エレベーターで一番最後に降りた時。
例えば、一番先にドアを開けて、最後に出た時。
こういう行動をしたとき、紳士と言われることがある。
輪廻転生の世界ならば、私はずっと紳士な人生を繰り返したい。
けれども、紳士って何だろう?っていつも疑問に思っていた。
なんとなくではあるが「謙虚という言葉を行動化させたら、紳士になるのだろうか?」と思っていた。
ここで言う謙虚とは、相手を優先すること。
最近話題に上がったGIVE&TAKEで言うと、GIVAしまくる人間。という所でしょうか。
そんな疑問を解消せず、先延ばしにしていました。
ところが先日、たまたま読んでいた「ラ・ロシュフコー箴言集」の中に、紳士に関する節と出会いました。
①「にせものの紳士とは、自分の欠点を他人にも自分自身にも隠す人である。ほんとうの紳士とは、自分の欠点を知り尽くし、それを率直に言う人である」
②「ほんとうの紳士とは、どんなことにも鼻にかけない人である」
ラ・ロシュフコー(以下より、ラと表記)は、紳士を本物・偽物の観点から考察してました。
上記2節によると、
紳士とは「自慢せず、自分の弱みを発信し、マウントを取らない人」と言える。
私が考えていた紳士とは「謙虚という言葉を、行動化させること」と表現していた。
違いはあるが、ラが指摘する、自慢しないというワードには共感できた。
・・・といった内容を、とある知人に話した。
すると彼は「僕はメンズエステで、お姉さんから紳士と言われた」と言った。
彼はメンズエステで紳士と言われたらしい。
紳士と言われる場所が多数あることは分かっていたが、メンズエステと紳士の関係性が全く分からなかった。
話を深堀りしてみる。
メンズエステでは、
マッサージしてくれるお姉さんに、触らないこと=紳士
マッサージしてくれるお姉さんに、触ること≠紳士
といった構図があるようだ。
(お姉さんに触る人がとても多いらしい)
さらにメンズエステは普通のマッサージ屋(りらくるとか)とは違うらしい。
話を聞いていると、こういった前提の違いが見えてきた。
【標準マッサージ店の前提】
・店員もお客も服を着ている
・店員は男性、女性がいて、選ぶことも可能
・服の上からマッサージ
【メンズエステの前提】
・店員は露出度高い服、お客はパンツ一丁
・店員は女性のみ
・オイルを使ってマッサージ
実際にメンズエステのHPを見てみると、違いは火を見るよりも明らかでした。
店員は皆露出度の高い人ばかり。
我慢できず、店員さんを触る人が多いと聞いて、首肯せざるをえなかった。
彼に、ぶっちゃけ話をしてみた。
「実際触りたくなるでしょ?」
彼はこう言った。
「触りたくなるけど、我慢している。触りたいが、お姉さんに"欲まみれ"と思われたくない。恥ずかしい。振る舞いよく見せて、男としての弱みを見せたくない。けどこういう我慢が気持ちいい」
変態であるが、紳士な人だと思った。
と同時に、ラの節を思い出した。
ほんとうの紳士とは、自分の欠点を知り尽くし、それを率直に言う人である
ラが考える紳士の定義に照らし合わせると、彼は紳士とは言えないことに気付いた。
なぜならば、彼は欲まみれという欠点を隠したからだ。
なんということだ。
彼はにせものの紳士なのである。
にせものの紳士とは、自分の欠点を他人にも自分自身にも隠す人である。
しかし仮に彼が、欲求に弱いという欠点(ここでは彼の欠点とする)を隠さず、お姉さんに触ってしまったらどうなるのか?
我慢できずお姉さんを触るという選択(ラによる紳士)を取った結果、下記3つの未来が出来上がります。
1.警察へ連行される
2.マッサージ中止、出禁になる
3.思いがけないハプニングが起こる
ラの定義に当てはめて行動すると、確率的には危険な結果が待ち受けております。
それでは彼は、にせものの紳士でいいのではないだろうか?
欲求や弱みを隠して、にせものの紳士として生きていくのが賢明ではないだろうか?
ここまでのお話をまとめますと、
私は彼のことを紳士と呼び、
ラは彼のことをにせもののの紳士(=紳士ではない)と呼ぶ。
それではお姉さんは彼のことを何と呼ぶのだろうか?
私と同じように、紳士と呼ぶのだろうか?
彼女がラの節を知っているとすれば、
彼のことをにせものの紳士と呼ぶのであろうか?
たしかに、自分の欲求を隠さず行動に出ることは、紳士である。
しかし普通に考えると、触る行為は変態になる。
彼女は彼のことを変態と呼ぶだろうか?
・・・といった内容を、とある知人に話した。
すると彼は、「僕は紳士だ」と答えた。